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リズム・テンポ・メロディ――声の表現(3)


こんにちは。ビートワン代表の金沢寿一です。今回の記事では、声で表現するときに欠かせないリズム・テンポ・メロディについてお話しします。これらの言葉から「歌」のイメージが湧く人も多いでしょう。しかしこれらは、ナレーションにおいても大切な要素です。

「立体的に表現する」とは?

ナレーションにおいて声で表現するということは、言い換えれば「原稿に書かれた平面的な文字を立体的にして表現する」ということです。ここで「立体的にする」ために必要になってくるのが、リズム・テンポ・メロディといった要素です

前回の記事(下記リンク参照)と重なってくる内容ですが、「適切なリズム・テンポ・メロディで声を出す」ということは、誰しも日常の中で行っています。私たちが日常で声を出すときには、視覚情報を中心として周囲のあらゆる情報を五感で受け止め、その環境に応じて自然に声を出しています。また、日常生活で通常声を出すときは「誰かとの会話」です。視覚的に相手を捉えることができるのです。

しかしナレーションにおいては、目の前には整頓された活字があるのみです。リズム・テンポ・メロディについてしっかりとした意思を持って、自覚的に声を出さなければなりません。また、聞き手も目の前にいるわけではないので、自分で想定しなければなりません。原稿を前にして、どれだけ日常のナチュラルなそれに近づけるかという点が、ひとつのキーポイントなのです。

そもそもリズム・テンポ・メロディとは?

ここでいう「リズム」は、上記のような日常の平常心の状態における、「話す速度」という意味で用いています。人それぞれ異なりますが、ひとりひとりのリズムは常に一定のものです。早口の人やゆっくり話す人など様々ですが、それがその人にとっての基本的なリズムなのです。また、どのようなリズムが正しく、どのようなリズムが正しくないということはありません。世代によっても変わるものですし、また変わるべきものです。

テンポは「緩急・強弱」です。根底に流れるリズムはそのままで、強調したい(するべき)言葉に必然的な「緩/急」や「強/弱」がつくということです(ここには、句読点をどう扱うかということも含まれます)。そしてメロディとは、「高低」です。

(声についてのすべてのテーマに言えることですが、特に今回の話は、文章のみでは非常に説明しにくいものです。宣伝となりますが、直接体験すればすぐに理解できるところですので、ぜひワークショップへの参加をご検討ください!)

逆に考えれば、これらの要素が欠落していると、いわゆる「棒読み」ということになるのです。近年は目覚ましい発展で人間の声に近づいていますが、SiriやOK Google、コルタナといった音声入力機能の音声などはまさにこれですね。

誰の声にもある「音色」を意識しよう

適切なリズム・テンポ・メロディを探るにあたって大切なのは、まず「自分の声を知ること」です。誰の声にも、持って生まれた「音色(おんしょく)」というものがあります。それが華やかなものなのか、人に心地よさを与えるものなのか、あるいは刺激を与えるのか、といったことを客観的に知っておく必要があります。

私の場合は、低い声なので、重厚な・ハードな表現のしやすい声質といえます。テレビコマーシャルなどのナレーションでも、昔から多かったのは車やオーディオといった機械関係のものでした。逆に高めであったり明るい声質で、お菓子などのイメージに合うという方もいるでしょう。もちろん、このようなイメージとキャスティングの関係は、時代とともに変わるものです。

自分がテレビ番組のナレーションをするなら、と想像してみるのもよいでしょう。骨太のドキュメンタリーに似合うのか、それとも楽しいバラエティ番組に似合うのか。あるいは、朝の番組にはまりそうなのか、夜の番組のほうがしっくり来るのか。このように考えてみることは、自分の音色を客観的に捉えることの助けになるかもしれません。

言葉の優先順位を意識すること

もうひとつ大切なのは、「言葉の優先順位」を意識することです。これは、前回記事の「言葉を『理解』した上で表現しよう」という内容とも繋がってくることです。目の前にある原稿に書かれたすべてが大切だと思ってしまうと、適切なリズム・テンポ・メロディで表現することができません。どの情報がコアになっているのかということ、言葉の優先順位をしっかりとつけることが重要です。すなわち、ナレーションには読解力が不可欠なのです。

基本的には、「聞き手にイメージを押し付ける」のではなく「聞き手にイメージさせる(ように持っていく)」表現がよい表現だといえます。そのためには、全部押し付けてしまうようなナレーションは避けなければいけません。言葉の優先順位は、この点でとても大切なポイントなのです。

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